5巻、亜麻の繊維取りの続きに、束を湖に沈める場面がある。これは「水漬け(レッティング)」という工程で、茎の周りの硬い組織を水中の微生物でゆっくり腐らせて柔らかくし、中の繊維を取り出しやすくするための下ごしらえだ。数日から数週間、水に沈めたままにする。
作業を終えた夜、女性たちだけでサウナへ
この作業のすぐ後、夜になって女性たちがランプを片手に連れ立ってサウナ小屋へ向かう場面が続く。母屋とは別棟に建つ、切妻屋根の小さな小屋。フィンランドの農村サウナは伝統的に独立した建物で建てられ、女性だけ、あるいは家族だけで共同利用する社会的な時間でもあった。
雪の残る道を、灯りを持って連れ立って歩いていく。何でもない移動のカットだが、当時の生活のリズムがそのまま出ている描写だと思う。
働いて、洗い流して、眠る
亜麻の水漬けが一日の労働の区切りだとすれば、夜のサウナはその日の締めくくりの休息にあたる。「働いて、洗い流して、眠る」という一日のリズムが、特別な説明もなく自然につながって描かれている。
サウナという習慣そのものについては、以前「教養 カトリの世界のサウナ文化」でまとめた。今回のような「女性だけで連れ立つ」「ランプを持って雪道を歩く」という具体的な情景を重ねていくと、当時の暮らしの手触りがどんどん解像度を増していく。